「AIに仕事を奪われる」という議論は、マーケティング職にとっても対岸の火事ではありません。三菱総合研究所のレポートが示す「2030年に事務職の雇用が大幅に減少し、専門技術職が170万人不足する」という未来予測は、マーケターに対して「これまでの『運用・管理』中心のスキルセットでは生き残れない」という強い警告を発しています。
この「大ミスマッチ時代」において、マーケターは何を考え、どう振る舞うべきなのか。データが示唆する3つの指針を解説します。
1. 「運用」からの脱却:「事務職」扱いの業務を手放せ
レポートでは、2030年までにRPAやAIの進化により、定型的な事務・管理業務において大規模な雇用減少が予測されています。
これをマーケティングの現場に置き換えると、以下のような業務は「価値」とみなされなくなる可能性が高いです。
- 単なる数値集計・レポート作成(AIが自動生成する)
- 広告の入稿・管理業務(自動最適化が進む)
- 定型的なメルマガ配信やSNS投稿(生成AIとMAが担う)
【マーケターの振る舞い方】
「手を動かすこと(作業)」に自分の価値を置くのをやめましょう。ツールやAIが代替できる業務は徹底的に自動化し、空いた時間で「AIには描けない戦略(Why)」を考えることへシフトする必要があります。
2. 「専門技術職」への越境:170万人の不足枠に入り込め
一方で、圧倒的に不足すると予測されるのが「170万人の専門技術職」です。ここにはエンジニアだけでなく、テクノロジーを理解しビジネスに実装できる「テクニカルマーケター」や「データアナリスト」が含まれると考えられます。
これからのマーケターに求められるのは、感性や経験則だけではありません。「データサイエンス」や「マーケティングテクノロジー(MarTech)」といった「技術」の領域へ、自身のスキルを拡張(越境)できるかが分かれ目になります。
【マーケターの振る舞い方】
- 技術的スキルの習得: PythonやSQLなどのデータ分析スキル、あるいはMarTechツールの裏側の仕組み(API連携やデータ構造)を理解する努力が求められます。
- 翻訳者になる: エンジニアと対等に会話ができ、技術的なシーズ(種)を顧客価値(マーケティング)に翻訳できる人材こそが、2030年の労働市場で高く評価されます。
3. 「人間理解」への回帰:AIが計算できない “感情” を握る
技術革新が進み、あらゆるデータが数値化される時代だからこそ、逆説的に価値が高まるのが「人間理解」です。
レポートでは「販売・サービス職」の需給バランスは比較的保たれる(あるいは余剰に向かう)とされていますが、高付加価値を生むのは「AIでは代替できない深い共感やインサイトの発見」です。
【マーケターの振る舞い方】
データ分析はAIに任せられるようになりますが、「なぜ人はそれを欲しがるのか?」「この数値の裏にある感情は何か?」というインサイトの洞察は、依然として人間の領域です。
定量データ(数値)だけでなく、定性データ(N1の感情)を深く読み解き、AIが導き出した最適解に「人の心を動かすストーリー」を付与することが、マーケターの重要な役割となります。
結論:2030年のマーケター像
三菱総研の予測が突きつけるのは、「中途半端なスキルセットでは生き残りが難しい」という現実です。
2030年に求められるマーケターは、以下の2つのどちらか(あるいは両方)を極めた人材でしょう。
- テック・ドリブン型: データとツールを駆使し、エンジニア領域まで踏み込んで仕組みを作れる人。
- ヒューマン・インサイト型: 人間の深層心理を理解し、AIには描けないブランドストーリーや体験を創造できる人。
今、あなたが日々行っている業務は、2030年にも「人間がやるべき仕事」として残っているでしょうか?この問いを常に自分に投げかけながら、スキルセットをアップデートし続けることが最大の対応策です。
参考資料: 三菱総合研究所「大ミスマッチ時代を乗り超える人材戦略 第2回 人材需給の定量試算」 https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20180806.html












